『個人再生を検討しているが、住宅ローンはどうなるの?』

『住宅ローンの返済ができない…でも家は残したい』

『個人再生をしようと思うが、自分の場合でも住宅ローン特則は適用されるのか?』

住宅は生活の基盤ですから、住宅ローンを抱えたまま個人再生を検討している方は、自宅を残したまま、借金を減額できるか非常に不安だと思います。こうした疑問を解説していきます。

住宅ローン特則の概要

自己破産の申立をした場合は、住宅ローンだけを残して他の借金を免除してもらうことはできません。結局、住宅ローンなどすべての借金が自己破産の対象として免責され、代わりに住宅は競売にかけられ、売却されてしまいます。

そのため、住宅ローンを抱えて、借金の返済ができなくなってしまったあなたが、住宅を失うことなく経済的に再生できるようにするための制度が用意されています。これを「住宅ローン特則」といい、マイホームだけは、どうしても手放したくないという方が、個人再生を選択した方ときに利用できる制度の一つです。

一般的に住宅ローンを組む場合、購入する不動産に住宅ロ―ンの担保として「抵当権」を設定するのが普通です。「抵当権」を設定すると、住宅ローンの返済ができなくなってしまった場合に、住宅ローン会社の抵当権の行使によって、住宅ローン会社は優先的に財産をお金に換えることができることから、結局あなたは、住宅を手放すことになってしまいます。

そこで、この「住宅ローン特則」を利用することで、裁判所は一定の条件のもと、あなたの住宅の敷地に設定された抵当権の実行としての競売の手続きの中止を命ずることができます。(「住宅資金特別条項」民事再生法197条)

そして、裁判所は、個人再生の手続きの対象から住宅ローンだけ外すことによって、

① 支払いが遅れてしまっている分の元金と損害金を分割で支払うことができる。(期限の利益回復)

② 住宅ローンの支払い期限を最長で10年延長ができ、月々の支払金額を減らすことができる。(最終支払期限の延長)

③ ②などでもどうしても負担が大きい場合は、元本の一部および利息のみ支払っていくことができる。(元本据え置き)

④ 住宅ローンの債権者の同意のもとさらに特則を決めることも可能である。(10年以上の返済期間など)

などが可能になります。これによってあなたは、住宅ローンを継続して支払っていくことで、住宅を残したまま借金の支払いができるようになります。

なぜ住宅ローン特則が設けられているのか

そもそも、個人再生手続は、裁判所を通じて、借金の減額することによって、借金をした方の経済的更生を図るものです。

この点住宅は、その他の財産と異なり、生活の基盤で、経済的更生にもつながるものです。個人再生手続きをした後も返済は続くため、その基盤を失わないようにするため、住宅ローン特則が設けられています。

また、この住宅ローン特則は、カード会社(クレジットカード会社・消費者金融・銀行)、住宅ローン会社にとってもメリットがあるという理由もあります。

もし、住宅ローンが残った状態で、あなたの自宅が売却処分されると、抵当権のある住宅ローン会社に優先的に費用が回され、残っている住宅ローンの債務に充てられます。

住宅ローンを下回る金額で自宅が売却されると、終わっていない住宅ローンの額が残り、この残った額が個人再生の対象となると減額や免除により住宅ローン会社は、最終的に全額を回収できなくなり、他のカード会社への配当も一切されません。

こうした事態は、自己破産をした場合にも生じます。

それならば、支払い期限が伸びたり、分割を認めることになっても今まで通り住宅を購入した方に住宅ローンを払い続けてもらった方が、カード会社や住宅ローン会社にとってもメリットがあるということになります。

住宅ローン特則は、個人の経済的更生を目的に、実は借金を回収するカード会社や住宅ローン会社の利益にも配慮したものとなっているのです。

住宅ローン特則を利用するための条件

住宅ローン特則は、個人再生手続が認められただけでは、無条件に利用できるものではありません。

・ 住宅ローン特則の対象となるのは、住宅購入ローンだけ(リフォームローンについては後程触れます)

・ 住宅ローン特則の対象となるのは、本人が居住用に所有している住宅1棟のみ

・ 住宅ローン以外の借金で抵当権が設定されていないこと。
ビジネス目的や事業融資に多い不動産担保ローンというようなものが設定されていると、住宅ローン特則を適用できません。個人再生の手続きをすることを決めた後に、住宅ローン以外に不動産を担保にした借金を返済すると、一部の会社だけに返済することになり、住宅ローンだけ特別に個人再生手続から除外して借金をした方を保護しようとした意味がなくなってしまうからです。

・保証会社の代位弁済から6か月以内であること
通常、住宅ローンの返済を滞納していると保証会社による代位弁済(保証会社が住宅ローンを肩代わりして残金金額を一括請求すること)が行われます。この代位弁済から6か月以内であれば、住宅ローン特則によって代位弁済をなかったことにできます。(住宅ローンの巻き戻しと言われます)民事再生法に規定があります。後ほど述べます。

・ 住宅ローン残高が、住宅の時価評価額よりも多いこと
住宅ローン残高が、住宅の時価評価額より低い場合注意が必要です。ローン残高より住宅の時価評価額が高い場合、個人再生手続で住宅ローン特約を用いると、資産が多いと判断されてしまい、最低でも清算価値よりも多い金額を返済金額に設定しなければならないというルール(清算価値保証の原則)から 本来個人再生で減額される場合よりも返済額が増えてしまいます。

例えば、住宅ローン以外のカード会社からの借金が1000万円ある方は、個人再生すると最低弁済額は1000万円×1/5=200万円となります。この場合、

1)住宅ローン残高が900万円で 住宅の時価評価額が1000万円であるとすると資産価格は1000万円-900万円で=100万円しかありませんから、最低弁済額>資産となり、総負債額の1000万円のの1/5=200万円を分割返済すればいいことになります。この場合は住宅ローン特則のメリットがあります。住宅ローン残額900万円を残したまま、200万円を3年かけて払うことになります。

2)これに対して住宅ローン残高が400万円で 住宅の時価評価額が同じ1000万円あるとすると1000万円-400万円=600万円の資産ありとされてしまい、最低弁済額<資産となり、住宅ローン特則を利用すると、この600万円を全額返済し、さらに1)の例と同様に住宅ローン全額を返済する必要があります。住宅ローン400万円を残したまま、600万円全額を3年かけて払うことになり、個人再生のメリットが少なくなってしまいます。

これらの条件を満たした上で、個人再生申立ての段階で、あらかじめ「申立書」や「債権者一覧表」に住宅ローン特則の手続きをすることを記載することによって 住宅ローン特則が利用できます。

住宅ローン特則を利用する上での注意点

住宅ローンの債務額は減額されないこと

住宅ローン特則は、個人再生手続の中から、住宅ローンをはずして、今まで通りの支払いを継続することによって住宅を維持しようとすることに目的があります。よって住宅ローン特則を利用することで、元金と遅延損害金を分割で最長10年延長した上で払っていけばいいというメリットはありますが、住宅ローンの残金自体については減額されません。

リフォームローンに適用できるのか

浴室やトイレ、洗面所や手すりといった住宅のリフォームをする場合に、リフォーム資金をカード会社から借りる場合があります。これは、住宅ローン特則の対象になるのでしょうか。リフォームローンについては、中古物件の購入や借り換えとあわせて住宅ローンとして借りる場合もあれば、無担保ローンとして住宅ローンとは別で借りる場合もあります。

リフォーム資金を住宅ローンとして借りる場合は、住宅に抵当権がついていますので、住宅ローン特則の対象になります。

これに対して、無担保ローンとしてリフォーム資金を借りている場合は、抵当権がついていないから住宅ローン特則の対象とはなりません。一般の借金として扱われ、残額が減額されることになります。

どちらのケースにしてもリフォームが原因で住宅を失うことは基本的にはありません。

代位弁済との兼ね合いについて

住宅ローンの返済が滞ると、保証会社が銀行や住宅ローン会社などに返済が行われ、銀行や住宅ローン会社に代わって、保証会社が一括請求してきます。これを代位弁済といいます。これによって住宅ローンを持っている方が持っていた期限の利益(分割して返済する利益)も失われ、放置していると最終的に抵当となっている住宅を競売にかけられ、住宅を手放さないといけないことになります。

そこで上記「住宅ローン特則を利用するための条件」でも触れましたが、代位弁済から、6か月以内であれば、個人再生の住宅ローン特則の手続を行うことによって、代位弁済をなかったことにし、今まで通り、住宅ローンの分割払いに戻すことができます。

ただし、代位弁済から6か月を過ぎると、住宅ローンへの復活はできす、保証会社の請求に応じなくてはなりません。

まとめ

住宅ローン特則は、返済が多額になって個人再生することになったあなたにとって、住宅という生活の基盤を失うことなく、借金を払っていけるということで非常にメリットがある制度です。ただし、個人再生が認められたからといって、無条件に住宅ローン特則が認められるわけではありません。住宅ローン以外の抵当権が設定されていないことや、保証会社の代位弁済から6が月以内に利用しないといけないなどの一定の条件があります。また、住宅ローンで支払っていかないといけない残額は減額されないことには注意が必要です。

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